1話

『昼の子供 夜の子供 児童相談所物語』1話 海より深く あらすじ

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つい最近気がついたのだけど、職場に向かう道から見えるあのマンションの窓にいつも子供の影が・・・

 

男の子?女の子?

 

遠くからでもその子がやせ細っているのがわかる。

 

以来ずっと胸騒ぎがしているのは職業柄のせいかしら

 

通勤途中に立つマンションの窓を見上げながら柄本三千加は考えていた。

 

彼女は児童相談書のケースワーカー。

 

まだ2年半の駆け出した。

 

彼女自身、子供のいるバツイチ女性。

 

同僚と朝の挨拶を交わしていると会議室から怒号が聞こえてくる。

 

「なんてことしてくれたんだ所長!あの母親に子供を返すなんて!!」

 

「ちゃんと親から誓約書をとってある。「二度と虐待しない、反省してます」とな」

 

「ばかな!」

 

それは相談所の所長と弁護士の津崎の言い争いだった。

 

二人は椅子から立ち上がり、お互いの立場から主張し合うばかり。

 

「まさか、それを信じたんじゃないでしょうね!」

 

一昨日、スタッフが苦労して一時保護した子供を児相が返してしまったようなのだ。

 

三千加が休みの昨日、母親がすごい剣幕で飛び込んできて5時間説得したものの説得しきれず、傷だらけの包帯も痛々しい幼子は母親に引き取られてしまった。

 

「しかたないだろ!?児相にはそれ以上の権限がないんだから」

 

「またそれですか!民法条!しかしこっちには児童福祉法第33条がある!」

 

「その権限は所長のあなたにあるんですよ!」

 

「だが親権者の遺志に反してまでの強制力はなんいだ!第28条、家裁が保全処分を決定してもな!!」

 

そこににこやかにお茶を運んで行った三千加。

 

一呼吸置いた所長は弁護士はお帰りだと言い放ち、終わらせようとした。

 

「これから家裁に行く打ち合わせにきたのにまた振り出しに逆戻りじゃないか!」

 

児童を救うためのプランを台無しにされたとばかりに弁護士はいきり立って事務所を出た。

 

「腰抜けども!」

 

その背中を三千加は追いかけて所長を弁護した。

 

「虐待されてる子供の立場はどうなるんだ!あんたらの弱腰にはヘキエキしたよ!」

 

なおも怒り狂う津崎。

 

所長は保身に走っているとなじる津崎に心を痛めていると反論する三千加。

 

「もし家裁がこちらの望む決定をくださなかったら困るのは当の子どもたちなんですよ!」

 

「申し立てに失敗して児童相談所が感情的なしこりを持ったまま再びケースワークができると思います!?

 

だからいつも親がこちらに決定的な反感を持ってしまわないよう気を使わなきゃならないんです!」

 

「ふん!そんな気を使っている間に子供が死んじまったらどうする!誰が責任をとるんだ!」

 

そのジレンマは児童相談所に常に付きまとうジレンマだ。

 

三千加自身も2年前はそのジレンマに苦しんだ。

 

健全な親子関係の回復のための相談機関であるとともに強制的に親子を引き離す権限も持つ児童相談所の矛盾にどう対処していけばよいのか・・・

 

「引き続き監視してもし母親が誓約を破ったら今度は有無を言わさず子供を保護しよう」

 

弁護士が引き揚げた後、所長たちは先ほどの件について話し合っていた。

 

「しかし家の中ですからねぇ、こっちも24時間見張ってるわけじゃないし。これからは外にもれないようもっと陰湿な虐待になりますよ」

 

「うーむ・・」

 

虐待は密室で行われるもの。

 

多くの場合目撃者も証言者もいない。

 

さらに子供は親をかばうのだ・・・・

 

児童相談所の電話は鳴りやまない。

 

「ハイ、こちら児童相談所です」

 

「おはようございます、どうなさいました?」

 

「そう・・・隣の赤ん坊の叫び声が・・・毎日のように」

 

-児童福祉法25条通告義務-

 

子供が虐待されていることを知った者は誰でも福祉事務所または児童相談所に通告しなければならない

 

(ただし、それを怠ったからといって罰則があるわけではない)

 

受話器を置いた三千加はため息をつく。

 

三千加にはぜん息を患う息子がいる。

 

空気のきれいな田舎に預けて自分は生活のため必死に働いているのだ。

 

その三千加に同僚が放った一言が蘇る。

 

「他人様の子供の面倒見てるどこじゃないじゃない」

 

(でもこれが私の仕事だし)

 

「木村クン、手が空いてたらここの住所に行ってみてくれない?生後9か月くらいの女の子なんだけど」

 

木村くんは思わず反発してしまう。

 

「こういうことは所長を通して会議にかけてから・・・」

 

「ただちょこっと近所まで様子を見に行くだけよ」

 

そのやり取りを聞いていた副所長は横槍を挟んできた。

 

「三千加クン、またそうやって独断専行を・・・・もし通報者の早とちりだったらどーすんの、こっちが赤っ恥かくでしょ」

 

副所長が手鏡を見ながら鼻毛抜きぬきしつつ三千加の心配を潰す言葉にイライラし始める三千加。

 

しかし通報を全部取り上げていたらケースワーカーが100人いても足りないという所長の言葉も事実。

 

(わたしも今の担当で手一杯ってとこ。これ以上仕事増やせば自分の家族にしわよせが・・・)

 

三千加が息子の写真を眺めながら心の中で謝っている間にもまた電話が・・・

 

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